すべての子どもに到達するために

杉本玲子


4-14 Window

 北緯10-40度地域での宣教を重視する宣教戦略[10/40 Window]を提唱したルイス・ブッシュ氏(Transform World Connections)が、新しく提唱している[4-14 Window]についての戦略が紹介された。これは、地域的な宣教重点戦略ではなく、4歳から14歳までという年代層へのアプローチの重要性を強調するものである。統計的に見ると、4歳から14歳までの間に救いの経験をする人が全体の約80% (地域によって75%-84%) と言われている。一方、15-24歳からはキリスト教的価値観から離れる割合が高くなるので、教会離れが始まる前の年代に焦点をあて、“The core of the core” として、見なすようにという呼びかけがなされた。10/40 Window がもはや重要でなくなったということはなく、10/40地域における4-14 Window世代が鍵であると強調された。確かに、4-14歳までの10年間は人間形成において決定的に重要な時期であるが、戦略的重要性を絞り込む動機が、伝道の効率化や「選択と集中」の論理であることのないように見極めていくことが大切であろう。

Empowerment of Children 

   以前から児童伝道や子どもミニストリーに情熱をもって取り組む団体は少なくはなかった。今回、新鮮さを感じたのは、「大人が子どもたちに伝道する」のではなく、「子どもたちが友だちに伝道できるように、大人が子どもを支える」という原則が確認されたことだった。エペソ4:11-13に書かれているように、子どもたちがキリストの弟子として、祈り、ゲーム、賛美リーダー、音響、パソコン操作などの奉仕をになっていくように整えるようにとアピールされた。以前によく用いられたワークブックのぬりえやフランネルグラフ等は、入学前から日常的にゲームや映像に触れている現代の子どもたちの興味をひかない。子どもたちを主の弟子、宣教師として同じクラスのイスラム教、ヒンズー教の子どもたちに影響を与えるように送り出す、という視点に希望を感じた。子どもが奉仕に参加するといっても、単に割り当てられた奉仕をするのではなく、子どもたちが意見を出し、子どもたちが決定権を持ち、子どもたちがミニストリーを運営していくという方向性はまさに、「全教会から全教会へ」というパラダイムシフトの具体的な一例である。

Family-Integrated Discipleship 

 多くの国の教会で、「子どもミニストリー」「ユースミニストリー」「青年ミニストリー」のように多くのミニストリーが乱立し、忙しすぎる奉仕者が自分の家庭を省みる時間が少なくなって、奉仕者の子どもたちが信仰を継承していないという悲惨な現実が分かち合われた。教会を中心とした宣教からパラダイムシフトして、家庭を中心とし、両親が子どもたちの全人的な成長を育み、未信者の家庭にアウトリーチしていくことが基本ではないか、とアピールされた。もともと、一番身近な弟子訓練は家庭において親が生活を共にしながら、子どもたちを主の弟子として育てることである、とファミリーミニストリーの重要性が再確認された。「子どもミニストリー」の分科会の参加者はほぼ子どもミニストリーの奉仕者であったのは当然であるが、ユースミニストリーやファミリーミニストリーなど、多くの分野の複合的な視点が必要であると思った。本質的に、世界中の教会の課題と日本の教会のかかえている問題は、大きく異なってはいないことを感じた。

1 for 50

 このような壮大な子どもミニストリーの拡大のために分かち合われた戦略が1 for 50(少なくても50人の子どもたちに1人ずつの奉仕者を育てる)であった。高い学歴と豊かな経験を兼ね備えているリーダーを育てるというより、草の根レベルで子どもたちと日常的に接している親、日曜学校教師、超教派団体リーダーとビジョンを分かち合い、地域教会のリーダーを育て、子どもミニストリー奉仕者のネットワークを確立しようと呼びかけられた。①クリスチャンホームの子どもの救い②未信者の子どもたちへのアウトリーチ③家族全体へのアウトリーチ④子どもたちの全人的成長⑤教会全体による子ども弟子訓練⑥将来のリーダーとして育てるなどのステップが分かち合われた。

 今回の第3回ローザンヌ宣教会議では、子どもミニストリーの分野で、非常につっこんだ議論がなされたことは評価したい。理論的にもバランスのとれた内容であり、大きなパラダイムシフトでもあると思う。ただ、子どもミニストリーの立場からの主張が強調されていたが、教会指導者の意見、より広い超教派団体の視点との対話も必要であると思う。更に、理論的なアプローチだけでなく、今後の発展と共に世界中からの実践報告を期待したい。

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コメント: 2
  • #1

    鎌野直人 (水曜日, 19 1月 2011 22:44)

    本当に勉強になりました。

  • #2

    立石充子 (金曜日, 21 1月 2011 20:25)

    ケープタウンでのある全体会議の中で、一人の子どもが大人の参加者のために祈ってくれました。それは、非常に感動的で、勇気づけられる経験でした。子どもの成長を見る時、大人は元気になります。イエスさまが、子どもを大切にするようにと言われたのは、実は、子どものためと同時に、大人のためでもあったのではないかと思います。