ケープタウン2010(第3回ローザンヌ世界宣教会議)


教会史上、大きな教会会議は教会が内的問題や外的圧迫による危機感を持つ時に開かれてきました。今日私たちの教会にはその両方が見られます。教会の中の問題としては、たとえばいわゆる「繁栄の福音」や、聖さ、一致、純粋さの欠如が挙げられるでしょう。外的圧力としては、多くの地域での迫害や、反キリスト教的知的雰囲気の広がりがあるでしょう。

1974年の「第1回ローザンヌ世界宣教会議」から世界は劇的変化を経験しました。1974年の世界は脱植民地時代、ジェット旅客機の普及、学生運動の激化などから10年を経ていました。今日、世界は新しい世紀を迎え、「9・11テロ」(アメリカ同時多発テロ事件)を経験して10年が経っています。イスラム教とキリスト教の大規模な文明衝突、諸国の急速な発展により新しい世界覇権争いへと時代は変わりました。今、世界と教会の内外の状態を共に把握し、宣教の使命の再確認が求められます。

 

 

ケープタウン2010の意義

 2010年は「エジンバラ世界宣教会議」百周年に当たります。ジョン・R・モットーは、「エジンバラ世界宣教会議」の組織的な継承者は世界教会協議会だが、その宣教スピリットの継承者はローザンヌ世界宣教運動であろう、と言いました。ウィリアム・ケアリーは1810年に国際宣教会議をケープタウンで開く幻を持っていたと言います。その幻は200年後に実現しました。

 「ケープタウン2010(第3回ローザンヌ世界宣教会議)」の目標は、単に参加者に感動を与えるだけではなく、そこに新しい一致が樹立され、明瞭なビジョンや取り組むべき優先順位を共有する結果を生み出すことです。

参加者がローザンヌ運動をホーム、故郷のように慕わしく思い、絶望的現代に生きる人々に福音のホープ、希望を与えることができるようになり、世界のキリスト者が尊敬しあい学びあうような互いのヒユーミリティ、謙遜さを得ることを目指しています。

 

 

7つの世界宣教のチャレンジ

 宣教と神学はひとつです。すべての神学は宣教活動に反映され、すべての宣教活動は神学的基盤に由来しなければなりません。新しい世界規模の課題には、世界規模の対話を重ねることによらなくては地球的解決策を得ることはできません。ローザンヌ運動は「全福音を、全教会が、全世界へ」という標語を掲げます。世界宣教のチャレンジには少なくとも7つの分野があります。

ローザンヌ運動では、これらの世界大のチャレンジに福音的な教会が共に取り組んでいくべきであろう、と考えています。

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■全教会■新しいバランス

 教会は世界にまたがるキリストの体です。次世代のキリスト教世界はどんな姿でしょうか。西洋社会統治とは違う顔をもちつつある現代の世界において、いかに新しい相互関係とバランス関係を築いて一致していくかが課題です。いわゆる北から南への移行は速くまた劇的ですが、一様に起こってはいません。そのため不均衡が生じています。経済的資源、権力、施設、言語、科学技術などの新しい平衡を見いださなければなりません。

■全教会■教会の悔改め 全教会が純粋さ、きよさの点で罪の悔改めを迫られています。世は、キリスト者をそのメッセージの内容ではなく、そのように生きていない偽善を見抜いて軽蔑します。クリス・ライトは、聖書から離れている、自分の繁栄のみを望む、偽りの教えが放置されているなど、21世紀の教会と16世紀宗教改革前夜の教会の類似点を指摘しました。

■全福音■キリストの独自性 ポスト・モダンの多元主義世界におけるキリスト教の真理性主張についてです。欧米は再び福音化される可能性はあるのでしょうか。ハーバード大学新総長は就任挨拶で「大学の象徴、ベリタスの楯は神の啓示の真理性という清教徒の信念を表してきた。しかし今は違う。真理は所有できず、汗して追求し続けるものだ。大学は居心地の悪い懐疑状態にあえて徹するべきである。」と述べました。多くの大学でキリスト教団体が学生伝道の機会を奪われつつあります。キリストのみが救い主であることの表明が求められます。

■全福音■苦しみの神学  

 確固たる苦しみの神学の必要性です。貧しさやテロリズム、エイズ、危機に瀕する児童など、苦しみの現実を放置しない神学です。麻薬のように働いて現実感覚を麻痺させる繁栄の神学が猛威をふるっています。そこには十字架がありません。十字架の神学が求められています。

■全世界■イスラムへの対応

 イスラム伝道についてです。西洋社会の相対的位置低下に伴いイスラム世界が勢力を伸ばす傾向はしばらく続くでしょう。共生と伝道のための議論が待たれます。

■全世界■終わっていない使命 宣教活動のまだ行き届いていない分野の認識です。他宗教への宣教、心身障がい者、文字でなく聞くことで学ぶ人々、都市に住む人、ディアスポラ、難民、移民、危機にいる女性や子ども、青年たちへの宣教、環境問題の取り組みなど、課題は多いのです。

■全世界■メディア革命の活用 世界規模のコミュニケーションや価値観に影響の大きいのがメディアです。否定的・破壊的なメディアの影響力を防ぎつつ、肯定的・建設的な潜在能力を見つけ、開発し、宣教に役立てる必要があります。